A Day in the Life

フィクションの話をしてるんじゃない。現実の話をしているんだ。

ひとの結婚式で

ポジティブな理由で泣きそうになったのは初めてである。ひとっていうか最も近い身内の弟だけど。せいぜい「ちょっと泣きそう」レベルで、他の親族や友人ダーダー泣いてたから、わたしは本当に他者への共感能力が低いんだと思った。それはともかく。

結婚式はとてもよかった。ホテルの披露宴とかじゃなくて規模の小さいハコだったけど、とてもよかった。

わたしはこの結婚式について、何もタッチしていない。スピーチを頼まれたらどうしようか考えたがそんな依頼はまったくなかった。式の日取りは知っていたものの、こちらから催促するまで招待状すら渡されなかった。結婚する相手と事前に会うこともなかった。本当に式を挙げるのか、何かトラブルでもあったのか不安になったほどだ。

しかし実際弟はきちんと段取りを済ませていた。相手方への挨拶、会場の手配、式当日の進行や親との打ち合わせ、料理のメニューまで、ちゃんとやっていた。当然のことだが。

それは別によかった。わたしは完全に招待されるだけの役回り、ということでよかった。

つらかったのは、わたしが何の関与もしていないこの式で、身内面して(身内だけど)立っていなくてはいけないことだった。どんな顔をしていいのかわからなかった。いたたまれない気持ちでいっぱいだった。何か話をしたいけど、何をどう話せばいいのかわからなくて、式が終わってわたしは帰った。身内じゃなくて、他の参列者みたいに。

弟や父から「どうして勝手に帰ったんだ」と怒られるかと思ったけど、何もなかった。いじけてるだけなのかもしれない。けど、最初から最後までわたしは必要なかったのだ、と思った。

結婚願望はないので、先を越されて悔しい気持ちはまったくない。むしろやっと父に「父親のスピーチ」をさせてくれてありがとうとすら思っている。自分の人生ではその役割を与えるのは無理だとわかっているから。

でもやっぱり、なんだか悲しいな。必要とされないのって、とてもつらいことだ。

せっかくの晴れの日にけちをつけたくないから、この気持ちは墓まで持っていくつもりだ。

最後に言えなかったけど、結婚おめでとう。そしてありがとう。